くだものは甘く、甘い=エネルギーが高いといったイメージがあるため、くだものを食べると太ると思っている人がいますが、これは大きな誤解です。くだものが甘いと感じるのは果糖によるもので、果糖は砂糖の1.15〜1.73倍甘さを感じますが、1g当たりエネルギーは4kcalと、他の糖と変わりません。甘いからといって、エネルギーが高いというわけではないのです。また、くだものは大部分が水分であり、菓子類のようにエネルギーの高い脂質がほとんど含まれていないため、100g当たりエネルギーは50kcal程度で、同じ量のショートケーキの7分の1程度です。最近のくだものは、技術革新により甘く感じるようになっています。糖度が1度上がれば甘く感じますが、100g当たりエネルギーの増加量はわずかに4kcalです。このように、くだものは低エネルギー食品なので、ダイエットに最適です。 肥満が怖いのは、糖尿病、高脂血症、痛風、脂肪肝、変形性関節症といった病気の引き金になる危険性が高いからです。さらに、糖尿病や高脂血症等は動脈硬化につながり、また脂肪肝は肝臓がんになるリスクがあるといわれています。生活習慣病の引き金になっている肥満に対して、くだものは重量の割に低エネルギーで栄養バランスがとれたダイエット食品として有効です。 くだものにも豊富に含まれている食物繊維は、もともとエネルギーが少ないうえに水分を含んで膨張することから、満腹感を与え、他の高エネルギー食品の食べ過ぎを抑えることができます。また、胃や小腸内で粘性をもつことから、脂質や糖質の吸収を抑制したり、吸収スピードを緩めたりするため、血中脂肪やコレステロールが上がりにくくなります。 食事の摂取制限によるダイエットでは、栄養不足が問題になります。同様に、食事制限が必要な糖尿病患者が、制限された摂取エネルギー量の中で栄養バランスのとれた食事をとるためには工夫が必要です。日本糖尿病学会は、「糖尿病食事療法のための食品交換表」で、生鮮くだものを1日1単位(80kcal分)とるように勧めています。これは、くだものはエネルギー当たりのビタミンCやカリウム、食物繊維の含有量が高く、制限された食事でも、効率良く必要な栄養素がとれる食品だからです。 糖尿病患者が1日に食べていいくだものの量を知りたい方はこちら このように、くだものは重量が多いにもかかわらずエネルギーが低いため、くだものを食べると、その分他の高エネルギー食品を食べずに済むことから、米国の代表的な医療機関であるMAYO病院では、健康な体重維持のため、バランスの取れた食事の摂取を前提として、エネルギー摂取過多になりにくいくだものの摂取目標量を無制限にしています。 |
厚生労働省が行った「平成19年国民健康・栄養調査」によると、我が国では「糖尿病が強く疑われる人は約890万人、糖尿病の可能性が否定できない人は約1320万人、合わせて約2210万人と推定されることが明らかになりました。これは国民の5〜6人に1人に当たり、国民病とも呼べる病気となっています。 糖尿病は、1型糖尿病と2型糖尿病に分けることができます。1型糖尿病は、インスリンが全くない、あるいはほとんどなく、インスリンの絶対量が足りないために糖尿病になってしまうものです。このタイプの場合は、インスリンを毎日注射し、インスリンの量を増やすことが必要です。一方、糖尿病患者の大部分を占める2型糖尿病は、遺伝的な体質を背景に食生活の不摂生や運動不足の環境因子が加わって発症する病気で、インスリンの量が不足したり、筋肉等でのインスリンの感受性が低下して、血糖値が異常に高くなり、様々な合併症を引き起こします。そのため、糖尿病患者は血糖値をコントロールするために適正な摂取エネルギー量に配慮した食事療法等が必要となります。 日本糖尿病学会は、「糖尿病食事療法のための食品交換表」において、糖尿病患者が制限された摂取エネルギー量の中で栄養バランスのとれた食事を摂るために、生鮮くだものを1日1単位(80kcal)摂るように提案しており、例えばみかんでは中2個との目安を示しています。くだものを1日1単位摂取した場合、1日に必要なエネルギーに占めるくだものの割合は数%とわずかにもかかわらず、ビタミンCやカリウム、食物繊維の含量が高く、くだものは制限された食事でも効率良く必要な栄養素がとれる食品なのです。 |
高血圧は、動脈硬化を進め、脳梗塞や脳出血、心筋梗塞等様々な生活習慣病を引き起こす原因になります。高血圧の予防策としては生活習慣の改善が有効と考えられており、肥満の解消、減塩やカリウムの適切な摂取、アルコール摂取の減少、有酸素運動の増加の4点が血圧低下の有効な要素であるとしています。 カリウムが豊富に含まれるくだものは、血圧の上昇要因であるナトリウムの排泄を促進し、血圧を下げる働きがあることが以前から知られています。また、最近の米国の研究でも、野菜やくだものを多く摂取すると、明らかに血圧を低下させることが報告されていますし、我が国の研究では、みかんをたくさん食べている方の高血圧の有病率が低いことも明らかになっています。こうしたことから、くだものを食生活の中にうまく取り入れることは、高血圧予防にも有効であるといえます。 |
くだものががん予防に高い効果があることは、国際的に認められています。2007年に世界がん研究基金と米国がん研究財団が、食品、栄養、運動とがん予防に関する研究について取りまとめた報告書「食品、栄養、運動とがん予防:世界的展望」によれば、くだものを摂取することにより発がんリスクが低下するのが「ほぼ確実である」と判定されたのは、肺がん、胃がん、食道がん、口腔・咽頭・喉頭がんであり、発がんリスク低下の「可能性あり」と判定されたのは、鼻腔がん、すい臓がん、肝臓がん、結腸・直腸がんです。 「食品、栄養、運動とがん予防:世界的展望」によるくだものの発がんリスク低下について知りたい方はこちら また、この報告書中に、がん予防のための10か条の勧告があり、4番目には、「植物性食品中心の食事をし、多種類のくだものと野菜、精製度の低い穀物、豆類を食べましょう」と勧告しています。さらに、野菜・くだものの1日当たり合計摂取量は、国民の平均値が600g以上、そして個人レベルでは、少なくとも400g以上になるよう勧告しています。 世界保健機関(WHO)においても、2003年「世界がん報告」を発表、2020年にがんの発生が現在の1.5倍に増加すると警告し、予防策の一つとして、くだものと野菜の摂取を勧めており、併せて、毎日くだもの・野菜を500g摂取することで消化器系がんの発生を最大25%減らしうる、という研究報告を紹介しています。 我が国の国立がんセンターが示している「がんを防ぐための12カ条」でも、第1条に「バランスのとれた栄養をとる」、第6条に「食べ物から適量のビタミンと繊維質のものを多くとる」こととされ、こうした食生活の工夫でがんの約30%が防げるとしています。 |
脳卒中は、脳の血管に障害が生じ、脳細胞に栄養や酸素が行きわたらなくなる等の病気で、高血圧、糖尿病、高脂血症、心臓病等が誘因となります。そこで、これらの疾病を予防することが脳卒中の再発防止にも役立ちます。また、虚血性心疾患は、心臓を取り巻いている冠動脈が動脈硬化によって細くなり、酸素や栄養が行きわたらなくなる病気で、高血圧、高脂血症、糖尿病等が誘因となることから、脳卒中の場合と同様にこれらの疾病を予防することが重要です。 このためには、まず「栄養バランスのとれた食生活」を心がけることが重要です。また、コレステロールを多く含む食品を控えるとともに、血管を強くしたり、血中コレステロールを下げる効果のあるビタミンC、フラボノイド類、食物繊維、さらに、活性酸素を除去するビタミンE等を多く含む食品を摂取することが重要であり、くだものはこれらの栄養素や成分を多く含む食品です。 |
「たかが便秘」といって放っておくと、腸に老廃物が溜まったままになり、食欲不振、腹部膨満感等の症状が出たり、大腸ポリープや大腸がん等を発症することがあるといわれており、便秘の原因を解消して便通をスムーズにすることが、健康につながるといえるでしょう。 便秘の予防において問題視されているのは、食の欧米化です。肉類や動物性脂肪のとりすぎはエネルギーの過剰摂取による肥満を招くばかりでなく、食物繊維の不足を生みます。食物繊維は、便のかさを増したり、腸を刺激したりすることで、ぜん動運動を促すとともに、水溶性食物繊維は腸内有用菌を特異的に増殖させますから、その結果、スムーズなお通じを迎えるとともに、健全な腸内環境を保つことが可能です。 厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2005年版)」では、成人男性で1日19〜27g、成人女性で1日15〜21gの食物繊維の摂取を勧めています。また、日本肥満学会でも、肥満の人は1日30gとるように指導しています。ところが、日本人の食物繊維の摂取量は14.2g(平成20年国民健康・栄養調査)とまったく足りていません。 くだものには、食物繊維がたっぷりと含まれています。食物繊維には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があり、両方含まれている食品の方が、食物繊維の働きがより高まるといわれています。くだものには両方の食物繊維が含まれています。 また、くだものは低エネルギー食品であり、エネルギー量(kcal)当たりの食物繊維量をみると、ごはんや食パン等の穀物より多く、ごはんと比べるとその含有量は10倍以上になります。エネルギーのとりすぎを心配せずに食物繊維を普及できる食品といえます。 |
美しい肌を保つには、規則正しい生活と栄養バランスのとれた食事が大切です。不規則な食事が続くと便秘気味になり、全身の新陳代謝がうまく行われなくなるため、ニキビ、肌あれの原因となります。くだものには食物繊維が豊富に含まれ、便秘を解消する働きがあり、加えてくだものに含まれる豊富なビタミンは美容に欠かせません。 このように、くだものは美容に欠かせないビタミン等栄養・機能性成分の補給源であり、また、エネルギーが少ないので、栄養バランスを崩しがちな20、30代の食生活には積極的に取り入れたい食品といえます。 ビタミンCは、肌を黒くするメラニン色素の形成の進行を抑える働きがあり、またメラニン自体を無色の還元型メラニンに変換して肌の色を元に戻すので、肌の美白に有効であることが広く知られています。加えて、皮膚の細胞間をつなぎ、肌に水分を蓄えるコラーゲンは、肌の弾力、シワに関係する重要な成分ですが、ビタミンCはコラーゲンの形成に不可欠な成分として機能しています。ビタミンCは水溶性であり、加熱に弱いことから、調理を必要としないくだものなら効率よく摂取できます。 できてしまったシミやソバカスをとるには皮膚の新陳代謝を活発にする必要があります。ももやキウイフルーツに多く含まれているビタミンEは血行を促進し、新陳代謝を活発にします。また、かんきつ類やキウイフルーツ、くりに多く含まれるビタミンB群は皮膚の新陳代謝を活発にします。 ビタミンAは皮膚を健康に保つ働きがあるため、不足すると乾燥肌やニキビ、吹き出物ができやすくなります。また、体内でビタミンAに変換するα−カロテン、β−カロテン、β−クリプトキサンチンにも同様の効果があります。みかんやびわ、かきはビタミンAが豊富です。さらに、くだものにも含まれるポリフェノールは、肌のくすみ等の原因となる活性酸素を除去する働きがあります。 |
骨粗鬆症は、骨密度が低下し、骨がもろくて折れやすくなる病気です。「フラミンガム」の研究では、学童期の子供の骨密度とくだものの関係について調べており、くだものをとっている子供の方が骨が丈夫であることが分かりました。また、フィンランドの研究でも、くだものと骨密度は正の関係にあることが報告されていますし、世界的にみても、くだものや野菜を食べている人たちはあまり食べていない人たちよりも骨密度が高く、骨折のリスクが低いことが示されています。 一方、最近我が国で報告された結果では、みかんに特徴的に多く含まれているβ−クリプトキサンチンの血中濃度が高いほど閉経後の女性の骨密度が高く、また骨密度の低い人たちの割合がβ−クリプトキサンチンの血中濃度が低い人たちに比べておよそ半分以下であることが分かりました。また、この関係は、くだものの摂取量でも認められました。このことから、β−クリプトキサンチンの豊富なみかんの摂取が閉経に伴う骨密度の低下に予防的に働く可能性が考えられます。 骨の形成には骨の材料となる栄養の補給が必要で、ビタミンCやミネラルは骨の形成に欠かせません。くだものにはこれらが多く含まれており、くだものは骨形成をサポートする優れた食べものといえるでしょう。さらに、くだものは骨形成だけではなく、骨吸収(古い骨が分解されること)に対しても予防的な働きがあります。骨吸収には、酸化ストレスが関わっていることがわかっています。従って、ビタミンCやβ−クリプトキサンチンといった抗酸化物質が働くことで、この酸化ストレスが抑えられ、骨吸収が緩やかになるというわけです。 |