くだもの辞典
りんご
来歴

りんごは、バラ科の落葉果樹で栽培果樹としてはとても古い歴史をもっています。スイス地方の先住民族といわれている湖棲民族の遺跡から発見されたりんごの化石から推定しておおよそ4000年前にはりんごが栽培されていたと植物学者が発表しています。原産地は、北部コーカサス地方といわれ、その後ヨーロッパに渡り、16世紀から17世紀ごろにはヨーロッパ中部以北の各地で栽培が盛んとなり、19世紀の中ごろにはイギリスが量・質ともヨーロッパにおいて大産地となりました。アメリカには、17世紀前半にヨーロッパからの移住民によってもたらされ、その後新種の開発、枝変わりの発見等によりすばらしい発展をとげました。現在世界各地で栽培されている品種のほとんどがアメリカから輸出されたものか、その子供や孫たちといって良いでしょう。

日本には明治の初めごろアメリカから苗木を持ち帰ったものが最初といわれており、それまでは地りんごといわれるりんごとは名ばかりの粒の小さい野生のものでした。このことから、りんごは我が国の中では歴史の浅いくだものといえます。

主産地

りんごは世界でも生産量が多い品目で、FAO(国連食糧農業機関)の統計によると、2013年の世界のりんご生産量は8,080万トンで、品目別の生産量ではバナナ、すいかに次ぐ第3位の品目となっています。特に中国では近年急増しており、3,970万トンと世界の5割弱の生産量を占めるに至っています。日本では、昭和37年から昭和46年の10年間は100万トンを超え、価格が低迷しました。この時期をピ−クに減少傾向に転じ、現在では66〜91万トンの生産量となっています。

主産地
種類

これまでに日本に導入された品種は1,000を超えるといわれていますが、現在生産されている大半の品種は日本で育成されたものです。中でも日本のりんご生産量の半分強を占めている「ふじ」は優秀性が認められ、今では世界各地で栽培されています。

一般にりんごの品種は収穫の早い順に早生種、中生種、晩生種の3つに大きく分けられますが、花の満開日から収穫するまでのおおよその生育日数は、早生種で120日以内、中生種で150日以内、晩生種では150日以上とされています。

それぞれの代表的な品種は以下のとおりです。

日本の消費者は、どちらかというと果皮色の赤いりんごを好む傾向があり、現在生産されているりんごの8割は赤いりんごで、王林や無袋の陸奥、シナノゴールド等の黄色のりんごは少数派ですが、盛り籠等の彩りには重宝されています。また、赤く着色しにくい品種では、生育途中で果実に袋をかけ収穫2〜4週間前に除袋することにより、きれいに着色させることができます。しかし、近年消費性向が外観から食味へ移りつつあることや生産労力の削減の観点から、最近は袋をかけない無袋栽培が増えつつあります

つがる

「ゴールデンデリシャス」の交配実生から選別・育成した品種で、花粉親は不明です。形は中程度でやや長円形。淡紅色の果皮に緑がかった黄色に太めの赤い美しい縞模様があるりんごです。早生種の中では、酸味が少なくさわやかな甘味に人気があります。

8〜10月に出回り、長野県で8月〜9月上旬、東北北部で9月中〜下旬に収穫できます。(主な産地は青森、長野)

さんさ

日本とニュージーランドの共同開発で生まれた新品種です。果実の大きさは中程度で円錐形です。果汁が多く甘味が強いのに加え、上品な酸味もあります。9月上旬以降に市場に出回ります。(主な産地は岩手、長野)

千秋

秋田県において「東光」と「ふじ」を交配して生まれた品種です。鮮やかな明るい紅色の縞が全面に入り、ぽつぽつと黄色い斑点があるのが特徴です。果肉は固めでシャキッとした歯ごたえがあります。甘さと酸味のバランスがよく、多汁でみずみずしさに人気があります。9月下旬から10月上旬にかけて市場に出回ります。(主な産地は青森、長野、山形)

世界一

「デリシャス」と「ゴールデンデリシャス」を交配して生まれました。大きいものは1キログラムにもなる大玉で、果汁と香りが適度にあり、果肉が細かく締まってさくっとした歯触りが特徴です。世界一というのは俗称で正式な品種名は「青リ四号」です。9月下旬ごろから出回り、年内が出荷のピークとなります。(主な産地は青森)

ジョナゴールド

アメリカの農事試験場で「ゴールデンデリシャス」と「紅玉」を交配して作られ、日本には1970年に導入されました。千秋に比べるとひとまわり大ぶりで、鮮やかな紅色が目を引きます。紅玉より酸味が少なく、風味もさわやかなのが特徴です。10月中旬から11月上旬にかけて出回りますが、貯蔵されるものは翌年の5月ごろまで出荷されています。(主な産地は青森、岩手)

シナノスイート

長野県において「ふじ」に「つがる」を交配し、育成した中生種です。果実の形は長円、果皮の色は赤色で、縞状に着色します。大玉、豊産性で、甘味が強く、果汁が多いのが特徴です。10月上旬から11月上旬にかけて出回ります。(主な産地は長野、青森)

シナノゴールド

長野県において「ゴールデン・デリシャス」に「千秋」を交配し、育成した中生種です。果実の形は長円、果皮の色は黄色で、甘味と酸味のバランスがよく、果汁が多いのが特徴です。着色管理が不要なため、省力栽培が可能です。10月下旬から11月中旬にかけて出回りますが、貯蔵性があり、翌年の5月ごろまで出荷されています。(主な産地は長野、青森)

陸奥

「ゴールデンデリシャス」と「印度」を交配した長円形の大玉です。果皮は無袋栽培の場合は緑黄色で、有袋栽培ではピンク色から紅色までかける袋によって変化します。 果実は400g〜500g。 果肉は黄白色で固め、やや酸味があります。また特有の芳香があり、日本生まれのりんごですが、欧米でも好まれ生産が増えています。「寿」や「祝」の字を黄色で浮かび上がらせて贈答用とされています。貯蔵性に優れ、10月下旬から翌年6月まで出回っています。(主な産地は青森)

王林

「ゴールデンデリシャス」と「印度」が混ざったりんご園に偶発実生したものを育成したものです。果形はやや面長で緑黄色から黄色に着色し、果皮に黒点があります。日本人が好む甘味と香りのバランスを持ち、なしのようなさわやかな味に人気があります。果実は250g〜300g。 果肉は黄白色でやや硬く緻密。酸味は少ないですが、甘く果汁も多く、独特の芳香があります。貯蔵性の高い中晩生のりんごです。10月下旬から出回りますが、出荷のピークは12月〜翌年1月です。(主な産地は青森、長野)

ふじ

「国光」と「デリシャス」の交配したもので、世界の品評会でグランプリを取った日本を代表する品種です。果皮は褐紅色の地に縞状に、または全面に鮮紅色に着色する美しいりんごです。甘味と香りが強く、程良い酸味とマッチして食味がよいのが特徴です。果実は300g前後。肉質は黄白色でしゃきっとした歯ごたえ、甘味が強く芳香があります。果汁が多く、特に蜜入りの果実はおいしく、海外でも広く栽培され世界で最も多い品種です。貯蔵性に優れているので、晩秋から翌年の初夏まで出回ります。袋がけしない「サンふじ」は外見や貯蔵性は袋がけした「ふじ」には劣りますが、甘さや香りは優れています。国産のりんごの約半分はこの品種です。(主な産地は青森、長野)

旬の時期

りんごの収穫は早生種の早いものは8月から始まりますが、主な品種の出荷開始時期は、つがるが8月上旬から、ジョナゴ−ルドが10月中旬から、ふじが10月中旬から、陸奥、王林が10月下旬からですが、日本で評価の高い蜜入りふじは11月から翌年1月ごろを中心に出荷されます。しかし、8月にはまだ青森県の前年産の貯蔵りんごが出荷されており、現在では一年中おいしいりんごが食べられます。

一般に貯蔵される品種は中生種や晩生種で、早生種は長期貯蔵には向きません。また熟度が進んだものや、蜜入りのりんごも長期貯蔵には向きません。このため、収穫後すぐに出荷される果実と長期貯蔵される果実では、栽培管理自体が異なります。

貯蔵にも普通冷蔵とCA貯蔵があり、長期の貯蔵にはCA貯蔵が使われます。貯蔵環境は温度0度、湿度は85%以上ですが、CA貯蔵ではこれに加えて、炭酸ガス、酸素ガスともにガス濃度は2〜3%に調整されています。

おいしい果実の選び方
色 果実全面に着色し、尻の部分に緑色が残っていないもの。
無袋又はサンと表示してあるものは、着色が鮮明でなくても食味は優れているものが多い。
また、つがる等の早生種は全面に着色していなくても、緑色が抜けていれば完熟しており、おいしい。
形 左右対象で変形していないものが、部位による味のバラツキが少ない。
大きさ 中玉で、持つと見かけより重く感じるもの。
表皮 張りがあり、指で軽く弾くと澄んだ音がするもの。
軸 皺がなく、弾力性があるもの。
香り 品種特有のさわやかな芳香を放つもの。
食べ方のポイント

りんごをすりおろして食べるときは、陶器やプラスチックのおろし板を使うと良いでしょう。金属のおろし板では褐変が進んでしまいます。また、切ったりんごの表面に薄い食塩水やレモン水を付けると褐変の防止になります。

貯蔵方法

乾燥しないよう、ポリエチレン袋に入れ、冷蔵します。エチレンを多く放出するので、他の果物と分けて貯蔵すると良いでしょう。

栽培方法
りんごの一年間の主な栽培管理作業を紹介します。
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