現在栽培されているあんずの原産地は、中国の北部から東北区南部の山岳地帯といわれ、ここからアジアやヨ−ロッパ各地へ伝えられました。中国では古くから栽培されていましたが、当時は果実を利用していたのではなく、種の中の仁を薬として利用していました。 日本にはあんずの野生種が見られないことから、中国から導入されたと考えられており、平安時代の古文書には長野県で栽培されていたとの記録が残されています。この時代の栽培も、主に仁の利用が目的でした。果実を利用するようになったのは明治時代に入ってからで、科学合成医薬品が発達し、仁の需要が減少したことによります。本格的に果実の利用を目的に栽培されるようになったのは、大正時代に入ってからで、果肉割合の多い品種が育成されました。 あんずの栽培適地は寒冷で乾燥した地域といわれています。日本ではりんごの産地と分布が一致しており、主に甲信越や東北地方で栽培されています。これは、西南暖地では花の開花が早く、授粉のための訪花昆虫の活動前であったり、幼果期に晩霜の被害にあう確率が高く、生産が安定しないためといわれています。 |
世界の主要生産国と日本の主要生産県は、次のとおりです。 |
あんずはうめ、もも、すももと遺伝的に近縁で、相互に接木が可能で、うめとは交配親和性もあります。日本で栽培されているあんずの品種を分類すると、早咲き、半離核、酸味多のうめ系あんず、やや早咲き、離核、やや酸味多の標準型あんず、やや遅咲き、離核、酸味中〜少のヨ−ロッパ系あんず、果皮に光沢があり、果肉色が淡色のすもも系あんずの4つに分けられます。 あんずは酸味が強いため加工に仕向けられるのほとんどですが、最近は酸味が少ないヨ−ロッパ系あんずとの交配により、生食用品種や兼用品種の育成が行われています。 主な品種は以下のとおりです。
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生あんずの主な出荷時期は6月下旬〜7月中旬です。 |
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適熟の果実は傷みが早いので、購入したらできるだけ早く食べるか、加工するようにします。適熟の果実は、あんず特有の橙色に着色するとともに、芳香が出てきます。また種離れが良くなり、縫合線に沿って軽く指で押すと、容易に2つに割ることができます。品種によっては生で食べることもできますが、酸味が強い場合は果実酒やジャム、シロップ漬け等に加工すると長期間楽しめます。 |
あんず酒の作り方 原料のあんずは適熟で新鮮なものを用います。これを水洗いしよく水を切っておきます。容器にあんずと砂糖を交互に入れますが、最上部には砂糖を多くし、35%の焼酎を静かに注ぎます。砂糖の量は原料あんず重量の3〜5割、焼酎の量は原料あんず重量の5割増を目安とします。この時に杏仁30グラムを加えると、より香り高いあんず酒になります。砂糖の代わりに氷砂糖を使うと、溶解するまでの時間あんずが浮き上がるのを防いでくれます。また焼酎の代わりにウイスキ−やブランデーを使うこともできます。これを密閉して約3ヵ月間、冷暗所で保存すれば飲めるようになります。 |
傷みやすいので、できるだけ早く食べるか、加工するようにしましょう。 |
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