くだもの辞典
なし
来歴

なしの品種を大別すると、日本なし、中国なし、西洋なしの3つに分類されます。

日本なしの原産地は日本の野生種を改良したという説と、中国や朝鮮半島から伝えられたという説があり不明ですが、10世紀以前から全国各地で栽培されていたと考えられています。しかし当時は産地を形成するには至らず、庭先での栽培に過ぎませんでした。栽培が本格的に始まったのは、江戸時代中期といわれ、関東地域や関西地域に多くの産地がありました。現在流通されているなしは、明治20年代後半に二十世紀や長十郎が発見され、大正時代に入ってから数々の新品種が発見されました。

中国なしは5世紀ごろから中国で栽培されていたとの記録が残っています。日本には授粉用に一時期導入されましたが、現在ではほとんど経済栽培はされていません。

一方、西洋なしの原産地はカスピ海沿岸のカシミ−ル地方といわれ、紀元前から広く栽培されていました。日本には明治初期にアメリカやフランスから北日本の各地に導入されましたが、当時は缶詰等の加工原料用品種が主で、生食用品種が栽培されたのは20世紀後半になってからです。

主産地

世界の主要生産国と日本の主要生産県は、次のとおりです。中国では中国なし、ヨ−ロッパやアメリカでは西洋なしが中心に栽培されています。日本では日本なしが全国で広く栽培されていますが、西洋なしも山形県を中心に栽培されています。

主産地
種類

日本で主に栽培されているのは日本なしと西洋なしで、日本なしは成熟期の果皮色が褐色の赤なしと、黄緑色の青なしに分けられます。日本なしの主力品種は赤なし群で、二十世紀を中心品種とする青なし群の生産量は、日本なし全体の15%程度となっています。また西洋なしの生産量は日本なしの10%程度です。

日本なし、西洋なしともに同じ品種間では授精しない自家不和合性の品種が多く、相互に和合性のある品種を混植しないとおいしい果実はできません。このため、植栽するときは複数の品種を組み合わせて植えます。

以下日本なしと西洋なしの主な品種を紹介します。

日本なし   果皮色 熟期 重量g 糖度 その他
幸水 赤なし 褐色 早生 300-350 11-12  
豊水 赤褐色 中生 350-400 11-12  
南水 350-400 13-15  
あきづき 400-500 12-13  
新高 晩生 500-600 11-12  
晩三吉
500-1000 10-11  
二十世紀 青なし 黄緑色 中生 300-350 10-11 要有袋
幸水

8月上〜下旬に熟す赤なしで、日本のなしの3割以上を占めています。果実は250g〜300gと中位、果形は扁円形で、尻が大きくへこむのが特徴です。酸味がなく、親の早生幸蔵の持つ特有の香気があります。(主な産地は千葉、茨城、福島)

豊水

9月上旬〜中旬ごろに成熟する赤なしです。特徴はシャキッとした肉質で時に酸味が残ることがあります。過熟になると蜜が入り、深みのある濃い味がします。(主な産地は茨城、千葉、福島、栃木)

南水

平成2年に長野県南信試験場において新水と越後を交雑して作られました。甘みが強く、果皮は黄褐色。糖度は13〜15度と極めて高く、中心部の酸味も少ないです。貯蔵性にすぐれ、収穫期から常温で1カ月、冷蔵で3カ月、氷蔵で6カ月間の貯蔵が可能です。(主な産地は長野)

あきづき

昭和60年に農林水産省果樹試験場において「162-29」(新高×豊水)に「幸水」を交雑して育成されました。収穫時期は豊水より若干遅く、収量性は豊水と新高とほぼ同程度です。果実は扁円形で,果皮色は黄赤褐色です。(主な産地は茨城、千葉)

新高

神奈川県農業試験場で育成され、新潟県の「天の川」と高知県の「今村秋」を交雑した品種。両県の名前を取って、昭和2年に命名されました。9月下旬から10月上旬に熟す晩生品種の赤なしです。(主な産地は千葉、熊本、高知)

二十世紀

1895年(明治28年)ごろに千葉県松戸で偶発実生したものを移植して栽培した青なしで、「20世紀の果物の王者」との夢を託して命名されました。熟期は8月末から10月上旬と長く、完熟期は9月中旬です。果皮が薄いので熟したものは傷つきやすいが、日持ちはいいです。 (主な産地は鳥取、長野)

西洋なし 果皮色 熟期 重量g 糖度 追熟期間 その他
バ- トレット
黄色 早生 250-300 13-14 15-20日  
マルゲット・マリ-ラ
600-1000 12-13 15-20日  
ラ・フランス 緑色 中生 250-300 15-16 15-20日 芳香有
ル・レクチェ 晩生 300-400 16-17 25-40日  
シルバ-ベル
400-500 14-15 25-30日  
ラ・フランス

フランス東南部のビエンヌで発見された品種です。無袋栽培されるのが普通で、果肉は淡黄白色で、緻密な上にやわらかく、多汁で高い香りと味わいに特徴があります。収穫期は10月中旬からで、追熟には2〜3週間かかります。香りが出ると食べごろです。(主な産地は山形、長野)

ル・レクチェ

フランスの園芸家オーギュスト・ルシュールが、香りが高く豊産性のあるイギリス産のバートレット種と晩生で料理用として用いられたベルガモット・フォーチュニーを交配して育成した品種です。気候温暖で肥沃な土地の栽培に適した品種で、収穫期は10月中旬から下旬にかけて。追熟には10〜15度で45日〜50日が必要で、可食期は12月〜1月にかけてになります。(主な産地は新潟、長野、山形)

旬の時期
日本なし

主要品種の出荷時期は、幸水が8月〜9月、豊水、二十世紀が9月〜10月、晩生種は10月〜翌年1月ごろです。

西洋なし

西洋なしは、収穫後追熟して順次出荷されますが、10月〜翌年1月ごろが主な出荷期間です。西洋なしは収穫直後は硬くて食べられませんが、15〜20度程度で一定期間追熟し、軟らかく多汁なおいしい果実になります。追熟する温度や期間は品種により異なりますが、早く出荷したい場合はエチレンにより追熟期間を大幅に短縮できます。

おいしい果実の選び方

日本なし

色 赤なしは軸の反対側の尻の部分まで褐色に着色しているもの。青なしは黄色地にほんのりと緑色が残っているもの。
形 左右対象で変形してないものが、部位による味のバラツキが少ない。幸水等は腰高の果実よりはやや偏平のものが糖度が高い。
大きさ 中玉で、持つと見かけより重く感じるもの。
軸 皺がなく、弾力性があるもの。

西洋なし

西洋なしの食べごろは外観では判断できない品種が多く、購入時に小売店で聞くのが最も確実です。しかしお店で聞くことができない場合は、以下により判断することができる品種もあります。

硬さ 食べごろになると軸の反対側の尻の部分がやや軟らかくなります。
色 バ−トレットやル・レクチェでは果皮色の緑色が抜けて黄色になります。
香 ラ・フランスでは独特の芳香が出て来ます。
食べ方のポイント

日本なし

日本なしは果皮に近い部分が最も甘く、果芯部にやや酸味があるため、切り分けるときは種の部分をやや大きめに切り除くとおいしく食べられます。

西洋なし

追熟して、少し柔らかくなったらおいしく食べられます。

貯蔵方法

日本なし

乾燥しないよう、ポリエチレン袋に入れ、貯蔵すると良いでしょう。

西洋なし

果実がまだ硬い時は室内に置き、柔らかくなったら冷蔵庫に入れましょう。

栽培方法
日本なしの一年間の主な栽培管理作業を紹介します。
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